3.リードの選び方 Vol.2


1.メーカーおよび種類の選び方

 ここでは、まだアンブシュア(口の形)が出来上がっていない方や、アンブシュアに悪い癖が付いてしまった方のリードの選び方に付いて述べて行きます。

 このような方々はその時の「吹き易さ」だけでリードを選んでしまうことが多く、同じリードでも吹く度に良く感じたり悪く感じたりしてしまい、結果的に吹いて正しくリードを選ぶことが出来ません。ですから、このような場合、吹かないで良いリードを選び、そのリードに合わせて吹き方(アンブシュア)を作るようにするのが良い方法だと思います。一番良いのが先生にリードを選んでもらうことですが、ある特定メーカー(種類)や同じ厚さのリードしか使用しない先生やリードの知識が少ない先生の場合、他人(生徒)の為に正しくリードを選べない場合があります。ある程度は自分でも良いリードを選べる方が良いと思います。

 日本で手に入れ易く、多くの種類のリードを販売しているのは、やはりバンドレンとリコーでしょう。私の記憶ではバンドレンは地中海の近くで採れた少し硬めのケーン(リードの材料の葦)で、リコーはメキシコ湾の近くで採れた少し軟らかめのケーンでリードを作っているはずです。一般的に日本ではバンドレンの方がカットも材質も良いと思っている方が多いと思います。実際私も多くの演奏でバンドレンのリードを使います。しかし、これからアンブシュアを作ったり矯正しようとしている方にはあまりお勧めできません。

 理由は解りません(使う人が増えた為でしょうか?)が、バンドレンのリードは最近材質が落ちているような気がしているのです。その結果、大変素晴らしいカット技術を持っているのに演奏に使用できるリードが1箱(10枚)に数枚(運が悪い時は0枚)しかありません。良いリードを使ってアンブシュアを作る為にはリードにムラがあっては困るのです。これがバンドレンをお勧め出来ない理由です。バンドンが悪いからではありません。

 それに対しリコーのリードは材質の悪いリードが非常に少なく(特にQIPマークの付いたリード)なっています。1箱(10枚)に7,8枚(運が悪くても半分)演奏に使用できるリードが入っています。ジャンルによってはリコーの軟らかめのリードが気になることもあるのですが、今回の目的には一番合っているメーカーだと思います。

 それでは、アンブシュアを作ったり矯正する為に良いと思われるリードについて具体的に述べていきましょう。私は、サックスでジャズ系の標準のマウスピースを使っている生徒さんにはラ・ボーズのMS(ミディアム・ソフト)を、クラシック系の標準のマウスピースを使っている生徒さんにはリコー・ロイヤルの2 1/2 (2半)を、クラリネットの場合は殆どの生徒さんがクラシック系の標準のマウスピースを付けているのでリコー・ロイヤルの2 1/2(2半)か、グランド・コンサート(青箱)の2 1/2(2半)を勧めています。マウスピースは標準のもの(楽器店やメーカーに問い合わせて下さい。)ならばメーカーも特に指定しません。材質は「リードの選び方Vol.1」を参考にして選んで下さい。

 まず、このリードでアルティシモ(ハイ・トーン)音域以外の音域が、楽に大きな音でロング・トーンが出来る吹き方を見つけます。音程はあまり気にしないで下さい。詳しいことはアンブシュアのワン・ポイント・レッスンで取り上げる予定ですので、今回は口の形よりも力配分の方に気を使って下さい。音が詰まったり、あるいはリードがマウスピースにくっついてしまって音が出なかったりした場合は明らかに力の入れ過ぎです。音がビービー言ったり汚い場合はマウスピースを深く加え過ぎか、咽か胸に力が入っています。ブレスが弱いかも知れません。高い音が出にくい場合は舌の位置が低過ぎるか、顎を引き過ぎていると思います。顎の位置は上の歯と下の歯が一直線になる場所にして下さい。どの場合も力を入れ過ぎると音が出なかったり詰まったりします。

 前述の吹き方がいつでも出来る様になったら、同じ吹き方で色々なリードを試し 自分の好みのリードを探すのです。バンドレンやリコーの他にもグロタン、クィーン等々私が演奏に使っているリードだけでも何種類ものメーカーがあります。

 前回の「リードの調整について」でも述べましたが、最近市販されているリードはとても良くなっています。まだ、材質に問題はありますが、自然の葦を材料にしているので、これは仕方がないと思います。良い材質のリードであればどのリードでも良い音が出せるのです。出せないとしたら吹き方に問題があるのです。しかし、音色は人によって好みが違います。ですから最終的にリードは「吹き易さ」ではなく「音色」で選ぶことになるのです。そして、ある程度の経験を積むまで「マウスピース、リードが変わっても吹き方は同じ。」と考えていた方が良いリードを選ぶには良いと思います。また、気に入った1枚のリードを吹き続けるのではなく、新しいリードと古いリード、厚いリードと薄いリード、A社とB社のリードと使い分ける(但し、吹き方は変えない)のもアンブシュアに悪い癖を付けない為には良い方法だと思います。良いアンブシュアを持つことが良いリードを見分ける第1歩です。


 参考までに私が演奏に使っているリードを記述しておきます。

○クラリネット(主にクラシック):クィーン、バンドレン(V12)、グロタン(GAIA)

○サキソフォーン(主にジャズ):バンドレン、リコー・ロイヤル、ラ・ボーズ、クィーン