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1.顎の中心を決める。
まず、正面から見て上顎(上の歯)の中心と下顎(下の歯)の中心を合わせます。殆どの方が歯の中心が顎の中心になると思いますが、歯並びが悪い方や、不安な方は歯科医に相談して下さい。勿論、マウスピースもこの位置(中心)でくわえます。
時々「私は歯並びの関係で、少し横に加えた方が良い音が出るのです。」と言う方がいますが、リードに加わる圧力を均等にしたり、タンギングを正確に行う為には顎の中心でくわえるのが最も良い方法です。そして何より、上顎と下顎がずれた状態で楽器を吹き続けたり、顎の中心以外の場所でマウスピースをくわえて演奏する事は、歯の噛み合わせの悪さが原因と思われる病気になる恐れもあり、健康の事を考えれば絶対に避けなければなりません。
初めは鏡を見ながら上顎と下顎の中心が合っている事を確認し、マウスピースをくわえる練習をします。そして、中心でマウスピースをくわえる感覚を覚え、鏡を見なくても中心でくわえられる様に練習するのです。この感覚は楽器を吹いている間にズレやすいので、定期的にチェックするようにして下さい。忙しくて楽器の練習が出来ない時や、ちょっと時間ができた時等に練習すると良いと思います。
2.顎の位置を決める。
次に、横から見て上の前歯と下の前歯が一直線になる様に顎の位置を調節します。出っ歯の方は下顎を前に突き出すようになるでしょうし、受口の方は顎を引くような形になるはずです。そして、顎を1cm位(大体です。)下げます。実際はマウスピースをくわえる訳ですから、口を少し空けた顎の位置が楽器を吹く時の顎の基本位置になる訳です。
余り格好は良くないのですが、割り箸を使うと練習しやすいでしょう。まず、歯の中心で割り箸の端を縦にしてくわえます。そのまま顔を正面に向けます。上の前歯と下の前歯が基本位置(一直線の位置)になっていれば、割り箸は地面と水平になるはずです。水平にならない場合は水平になるように顎を調節します。この時、顔は正面を向いたままです。割り箸を水平にする事ばかりに気を取られて、顔を上に向けたり下に向けたりしないようにして下さい。またこの時、割り箸が上を向く顎の位置や下を向く顎の位置もコントロールできるように一緒に練習しておくと良いでしょう。この顎の位置は高い音や低い音を吹く時に必要になります。
3.頬の筋肉の使い方を練習する。
顎の位置が決まるようになったら、頬の筋肉の使い方を練習します。前述の1.2.で練習した顎の位置は固定したまま、「イ」の口の形と「ウ」の口の形を交互に作ります。つまり、「イ・ウ・イ・ウ・・・・」と大袈裟に口を動かす訳です。この時も割り箸を使うと練習し易いと思います。顎の位置を決める時の練習同様、歯の中心で割り箸の端を縦にしてくわえます。そして、割り箸が地面と平行になるように顎の位置を決めます。そのまま、割り箸が動かないように、「イ・ウ・イ・ウ・・・・」と練習する訳です。勿論、割り箸が上を向く顎の位置や下を向く顎の位置でも練習して構いません。ここで大切なのは唇の形を変えても顎が動かないようにすることです。
更に、試しに割り箸の代わりに自分の指を軽くくわえて「イ・ウ・イ・ウ・・・・」と口を動かしてみて下さい。練習を続ける間に、顎が自分の指を噛んで行きませんか?何も変わらない人は問題はありませんが、顎が指を噛んで行く方は実際に楽器を吹いている時も同様の事が起こる可能性があります。このような方は長い時間楽器を吹いていると、音が詰まって来たり、リード・ミスが多くなるはずです。これは、厚いリードを付けると取り合えずは収まります。しかし、すぐにそのリードでも同様の事が起こり、更に厚いリードを付ける必要が出てきます。これを続ける間に自分では到底コントロール出来ない程厚いリードでなければ音が出せなくなって来ます。こうなってしまうと最悪です。取り合えず音は出るものの、その音は音色も音程も音量もコントロールできませんし、音そのものもとても汚いものになってしまいます。更に、唇を傷めたり、顎関節症になったり、ひどい時は呼吸器系の病気になったりする場合さえあります。このような理由で、私は安易に厚いリードを使うのを嫌がる訳です。また、このようなトラブルを避ける為にも頬の筋肉の使い方は是非練習して下さい。
今回取り上げたトレーニングは地味で面倒で格好悪い物ばかりですが、とても大切な事ばかりです。色々と工夫して練習してみて下さい。また、もっとスマートな練習方法があれば是非教えて下さい。