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ここでは、私の行っている良い材質のリードを選ぶ方法を紹介します。私はリードを選ぶ時に「良いリードを探す。」のではなく、悪いリードを排除し、残ったリードを使うようにしています。
まず写真1の様に、半分程水を入れたコップの内側にリードを張り付けて水を吸わせます。時間はリードの上になっている部分(ヒール)まで水がしみて来るまでで結構です。リードの質にもよりますが、大体2分〜3分程度です。
次に水を吸わせたリードを写真2の様にガラスの上に並べます。この時リードのまん中を軽く押し、ガラスにリードを張り付けます。リードが乾くまでこの状態で置いておきます。晴れた日ですと2〜3時間で乾きます。乾きが遅くても1日乾かしておけば充分です。
そして、乾いたリードが曲がったり反ったりしていないか、ガラスの上でチェックし、曲がったり反ったりしているリードはここで排除します。湿ったり乾かしたりした時に状態が変化し易いリードは演奏には向きません。また、この時ガラスを使用するのは、私達が手に入れ易いものの中で、ガラスが最も平らな状態を維持し易い物だからです。平らで水を吸わないもの(勿論衛生的なもの)ならば何でも構いません。
次はリードを表面の(皮の部分)の色や模様で3つに分けます。1つ目がシミのような模様が入ったもの(写真3左)、2つ目が色が薄くて黄色っぽいもの(写真3右)、そして3つ目が色が濃くて茶色っぽいもの(写真3中)です。私の経験では模様が入ったリードは材質が堅く、黄色っぽいリードは材質が柔らかい様です。茶色っぽいリードは木の繊維にあまり弾力性がなく、演奏に向かない場合が多いような気がしているので、私は排除してしまっています。
後は、残ったリードを光りに透かして、太い繊維がある物を排除し、最後は実際に吹いて低音域、高音域等に出にくいところが無ければ全て使ってしまいます。
そして、選んだリードはリード・ケース(写真4)に入れてしまっています。そして、そのリード・ケースには材質の堅いもの(模様の入ったもの)と柔らかいもの(黄色っぽいもの)を一緒に入れておき、その時々で使い分けるようにしています。
リード・ケースに入れるのはリードを保護するという理由もありますが、演奏で湿ったリードが乾く時に曲がったり反ったりするのを防ぐと言うのが一番の理由です。
厚さ(実際は硬さですが、感覚的には厚さ)の表示の仕方はメーカーによって違いがあります。一番多いのが数字で、2、2と1/2(2半)、3〜等と表す方法です。数字が大きい程硬く、小さい程柔らかくなります。他に私が知っているのはアルファベットで、MS(ミディアム・ソフト)、M(ミディアム)、MH(ミディアム・ハード)の様に硬さそのものを表す方法です。残念ながらメーカーやリードの種類が違うと厚さの表示に互換性が無くなってしまいます。つまり、A社の3番のリードを使っていた人がB社の3番を使うと厚く感じ、C社の3番を使うと薄く感じるなんて事があるのです。これらの事を確認した上でこれから先の文を読んで下さい。
それでは、皆さんに合った厚さのリードを選んでみましょう。「合ったリード」と言っても「あなたは2半のリードが合っています。」とか限定するわけではありません。リードの厚さは必要な音量、音色、演奏する会場等によって使い分けなければなりません。ですから、ここで言う「合ったリード」とは「あなたが演奏に使えるリードの厚さの幅。」(例えば2半〜3等)と言うことになります。
薄いリードは技術さえあれば誰でも一番薄い厚さを使うことが出来ます。つまり、「どれくらい薄いリードが使えるか。」イコール「どれだけリードをコントロールする技術を持っているか。」と言うことになります。私がこのような事を言うと、「薄いリードは音がビー、ビーいって汚くなるから嫌です。」と言う人が必ずいます。しかし、音が汚くなる原因がリードにある場合は意外と少ないものです。多くの場合、吹き方に問題があるか、まだ、リードをコントロールする技術が身に付いていないかのどちらかです。
問題は厚いリードです。無理して(叉は気が付かないで)厚いリードを使っていると唇を傷めたり、悪い癖を付ける原因になったりします。私が見る限り多くの人が自分の限界を超えた厚さのリードを使っています。楽器を長時間吹いていると口が痛くなる人、音域によって音程がばらばらな人、要注意です。厚いリードを使うにはしっかりとトレーニングされたブレス・コントロールが必要になります。つまり、「どれくらい厚いリードが使えるか。」イコール「どれだけしっかりとしたブレス・コントロールを身に付けているか。」と言うことになります。
ですから、自分に合ったリードの厚さを知るためには、まず自分にとってどれくらいの厚さが限界なのか知る必要があります。それには、次の様なことをしてみて下さい。
まず、楽器、マウスピース、リードを音が出る状態にセットします。そのマウスピースを軽くくわえます。ダブル・リップのアンブシュア(オーボエのように上下両方の唇を歯に巻くアンブシュアです。ダブル・リップについてはアンブシュアのワン・ポイント・レッスンで詳しく取り上げるつもりです。)ができる方はダブル・リップを使って下さい。次に、口に力を入れずに(唇を横に引いたり、顎の力でリードに圧力を加えないで)静かに息をマウスピースとリードの隙間に入れます。楽器の中からスーと言う息の音が聞こえればOKです。その時の口の形、力の入れ具合を維持したまま、息を少しずつ強くしていきます。息を強く入れた時に口に力が入らないように気を付けて下さい。ある程度息を入れたところで音が出れば、それは「あなたのブレスで音が出せる厚さのリード。」と言うことになります。何度も言いますが、口には力を入れないで下さい。
しかし、そうとう強く息を入れなければ音が出なかったり、音を出すために口に力を入れなければならないとしたら、そのリードの厚さはあなたのブレスの限界を超えています。もう少し薄いリードを使うことをお勧めします。それで、音が汚くなるのでしたら、リードを厚くするのではなく、アンブシュアとブレスのトレーニングをするべきです。
薄いリードの限界は音色と高音域の音程で判断して下さい。音が汚くなり始めたり、高音域が下がったり(叉は出にくかったり)したらそのリードはあなたの限界を超えています。ロング・トーンやスケール等の基礎練習をして、リードのコントロールを身に付けて下さい。
最初は自分にとって限界ギリギリの厚さのリードで練習するのが良いでしょう。正しく練習していればこの限界は少しずつ上がっていき厚いリードでも吹けるようになります。そして上手くなったら薄いリードを使っても同じような音色が出せるように練習しましょう。こうして、使えるリードの厚さの幅を少しずつ広げていくのです。この幅が広ければ広い程表現力が増す事になります。